2023年1月17日火曜日

1.17-18 _豊かさについて

梅田の阪急でみた上出長右衛門窯×kamide shigei×上出惠悟という人びとによる「KUTANNI CONNEXION」に豊かさを漠然と感じたのだけど、それは豊かさを作ろうとする、豊かさというか。というところを考えておきたいと思った。

それを感じたのは、展示にいった日の昼に見た、写真家の谷藤貴志さんの展示(flostsam books)からつながっているのかもしれない。

谷藤さんはずいぶん前に知り合って、長いこと消息はなかったけれど、

昨年急になんか写真集を出して、送ってくださった。聞いたら、昨年じゃなくて一昨年だったらしい。

モノクロームの写真が淡々と並んで、いつの時代か分からない、撮り手も曖昧な感じがする・・・、不思議な本だった。

妙にイメージに残るけれど、具体的な意味を語らないもの。

ただ、その谷藤さんという人の生きてきた物語がある様な感じはしていた。


それは家族の、一族の物語でもあるのだという。

二世代まえに日本に集団で移住した一族のなかの、彼の家族。

それと、色々な土地で時間をともにした人との濃厚な記憶が絵になっている。

どこか抽象的なおもむきもあって、画がいい。

最初に訪れたときは、壁面にあるキャプションのない、電車の中の父と子の写真に惹かれたのだけど、それは思えば谷藤さんの写真の、とても好きな一枚だった。車窓からはいる光がやさしい。

撮ったのは谷藤さんだけではなくて、親族の撮った写真も無造作(のように)置かれている。「写真家」という個人にしばられない、何か選び手としての手の運び方が面白く、色々な見方ができる。

ちょうど訪れた知人の京都の古道具屋さんを前に、飄々とスライドをあやつる谷藤さんの感じも、四方山話も素敵でした。


さて、上出さんの展示に感じたのも、そこから続いている。

一個人の可能性とかやりたいイメージにとどまらず、そこに生まれたことだったり、美術家として生きていることだったり、デザイン的な素敵なセンスもあるし、とはいえ無理をおして継いだ稼業、その経営を日々あくせくとこなしていたり、、、表現とか仕事とかコミュニケーション、生活・・・ないまぜになった複合的なことを常にしている。

判断につぐ判断、合間にうまれる奇異なイメージ、変態的な発想。

そんなものがないまぜになる根っこのところに、やはり自分の根である大きな一族・・・窯があるんだなと、ギャラリーツアーと題したトークをきいていて感じた。

すごくありていな言い方でいうと、伝統がなしてきた暮らしの豊かさを、その場を保ちながら今の人に向けて、出し続けている。あらゆるモチーフやかたちに理由があってその濃さって面白いし、それが暮らしにあることに豊かさを感じる。そんな豊かさを、普通に、真正直に彼の視点で生み出そうとしている……そうしたことを感じていた。

そのトークの記録を取り忘れていたのは残念だけれど、それは渾然としているから続くのだろうし、渾然となったところから生まれる力もあるのだろう。そんな感じで、上出さんはつらつらと、言葉をゆっくりと選びながら話す。ゆっくりと、というのは大切だ。自分の呼吸だから。

「デパート」への憧れとか楽しさを空間で描き出していたのも楽しかった。デパートというのにそもそも抵抗感があるからその楽しさは芯から味わえなかったけれど。向かいに「九谷焼最前線」のような展示をしていたのも面白かった。いやでているものも面白いと思うのだけど、色々な視点が入り混じるCONNECTIONのほうが大層はまった。


いつかから熊に突然惹かれた上出さんの、熊についての話に、ちょうど読んでいるアミタヴ・ゴーシュの『大いなる錯乱』(以文社)とのリンクも感じた。それは近代というか現代がつくった仕組みによって、ないがしろにされたもの・・・というか「思考しえぬもの」となった物事のこと。でもそこに拠り所が、本当はあるのでは? という話なのかな。文芸の先端の人が語っているからまた面白いし響く。というか、気づいてないことばかり。まだ途中だからはっきりしたことは言えない。

上出さんの仕事についても、もっと考えていきたいと思う。


それで豊かさというのは、自分自身、類縁がそこまで多くないのと、あまり歴史をかえりみないところがあるから、なおさらそう感じるのかな〜〜と思った。


雑然とした週末の記録。

それらを結びつけるのは、ただ私が感じたことその一点のみ、なのかな? 東京にかえってから見た本日休演と山本精一play groundEASTのライブも僥倖のように素敵だった。あの空間に音が広がっていく感じ、声がしんと響く感じ・・・、また書きたいと思う。

とりあえずそんな豊かさを思ったことと、生まれ年の今年のおまもりとして、ウサギの水滴を買った。机上に、今にも跳びそうにしゃがんでいる。

持ち心地のいい未来派。


0 件のコメント:

コメントを投稿